皆さんは、何かを食べて、あまりの美味しさに感動して泣いたり、笑ったりしたことありますか?私は3回あります。
1回目は、スペインに留学中。パエリアやスペイン風オムレツ、ワインやピンチョスは大好きですが、さすがに1年も住んでいるとあっさりとした日本食が恋しくなるもの。遊びすぎで身体が疲れてきたせいもあって、体中に蕁麻疹ができたことがありました。ちょうど春の季節でした。両親が遊びに来たので久しぶりに都会へということでバルセロナを案内しました。初めてスペインに来た両親はスペイン料理を楽しみにしていましがら、私の胃の調子が悪く「申し訳ないけど、日本食でいい?」ということで和食レストランに行きました。私が住んでいた田舎には和食レストランがなかったのです。
レストランでは、うどんやかつ丼を注文しましたが、「卵かけご飯」というメニューが目に入りました。海外では生卵を食べる習慣がないので、スペインで生卵を多気れるなんて!と興奮しました。そして、もちろん注文して、その卵かけごはんを1口、口の中に入れた瞬間、ポロポロと涙がこぼれ落ちました。美味しいというよりも、心からホッとして和んだ安心感という感覚でした。異国の地でひとりで頑張って来て、両親が来てくれて日本食を食べて安心したのでしょうね。忘れられない瞬間になったのです。そして翌日もその和食屋さんに行きました。両親は私と離れた後、スペイン料理を堪能したそうです。
2回目に泣いたのは、銀座のお寿司屋さん久兵衛でランチした時のことです。しかも、ひとりで。ケニアから帰国して1週間も経っていませんでした。日本食が恋しくて。一番恋しかったのは母の煮物。それは帰国した日につくってくれて食べました。2番目はラーメン。これも近所の美味しいラーメン屋さんに翌日行きました。3つめはお寿司、しかも美味しいお寿司が食べたくてたまらなかった。ついに銀座の九兵衛でほっぺたの落ちそうな美味しいお寿司を食べ堪能していました。もちろん美味しいのは想定内。まさか自分が泣くとは思っていたなかったのですが、穴子が出てきたのです。穴子ってそんなに期待しなじゃないですか?しかもトロやウニが終わった終盤で満足度は高いまま期待値は下降していました。その矢先に、穴子だったのです。九兵衛では、塩味のとタレのを出してくれるのですが、その塩のを口に入れた瞬間。ポロポロと涙がこぼれました。
「あぁ。。生きていて良かった。ケニアで大変なこともあったけれど、こうしてトイレの綺麗な日本に帰ることができて、虫のいない清潔なお寿司屋さんでこんなに美味しいお寿司を食べているんだなぁ、私。生きてるって最高だ!」と、じわ~っと込み上げてくるものがありました。昼間にひとりでカウンターでお寿司食べながら泣いてる女子。きっと誰も話しかけられなかったと思います。
3回目は、泣くを通り越して、爆笑した話です。結婚式を挙げた邸宅レストランでのこと。今はもうなくなってしまいましたが、素敵なお庭のある青山にあるレストランです。結婚式のディナーの味見に夫と訪れた時でした。前菜って、そんなに期待しないじゃないですか?メインやスペシャリテならまだしも。アミューズ後の1皿目に出てきた前菜にやられました。見た目は完全にプリンなんですけれども、「フォアグラのフラン」と書いてありました。フォアグラを食べたことある方なら想像できるあの味…じゃないんです!これは言葉では表現できませんが、これまで食べたことのない触感と味わいに、感動の涙を通り越して爆笑してしまいました。美味しすぎて泣く経験は過去2回してきましたが、爆笑するのは初めてでした。
記憶に残るほど美味しかった瞬間、忘れたくない人や言葉、頭に焼きついている情景。そんな記憶と感情は、どうしてその瞬間でなければならなかったのだろう?と、ふと思います。人生で起こったことのほぼ全ては忘れてしまうのに、五感と感情に結び付く瞬間の情報だけは忘れないなんて不思議ですね。
忘れたくても忘れられないこと、逆に、忘れたくないのに忘れちゃうこと。
プロポーズの瞬間を忘れる人は少ないとは思うけど、何気ない日常でバラを贈ることや贈られる体験は「忘れない」カテゴリーに入るんじゃないかな、なんて思います。
皆さんが、忘れたくないこと、忘れられないことって、何ですか?